希少放線菌の遊走子は、豊栄養な環境に辿り着くと遊泳を停止し、発芽して菌糸状の生育を開始します。この際、べん毛モーターのブレーキの役割を担うタンパク質を発見しました。本研究は、希少放線菌の複雑な生活環を支える巧妙な分子機構の1つを解明しただけでなく、高性能ナノマシンである細菌べん毛モーターの分子機構解明の新たな糸口を見出した点で重要です。

https://www.nature.com/articles/s42003-024-07104-6
研究科HP

放線菌の持つavenalumic acidとp-coumaric acid生合成経路から見出されたジアゾ基合成酵素を活用し、in vivo, in vitro2つの方法論でPhenyldiazene誘導体の生産に成功しました。ジアゾ基を基盤とした天然物誘導体化が実際に行えることを示した重要な成果です。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39420540/

希少放線菌の胞子嚢形成に関与するアシルトランスフェラーゼAtsAを、22個のアシルトランスフェラーゼホモログの遺伝子破壊実験により同定しました。AtsAがどのようにして胞子嚢形成に関わるかはわかっていませんが、胞子嚢形成の分子機構を明らかにするうえで、大事な発見の1つになると考えられます。

https://journals.asm.org/doi/epub/10.1128/spectrum.04010-23

非リボソームペプチドcirratiomycinの生合成遺伝子クラスターを同定した論文がChemistryに公開されました。同時に非タンパク質性アミノ酸である2,3-ジアミノ酪酸とヒドロキシメチルセリンの生合成メカニズムを報告しています。本論文はHot paperにも選出されました。

https://doi.org/10.1002/chem.202400271

希少放線菌では、胞子嚢内に伸長した菌糸に隔壁が形成され、それによって生じたコンパートメントが成熟して胞子になります。その最終ステップにおいて、連鎖状につながった細胞が分断されますが、この際の細胞壁の分解には酵素が必要です。以前の研究でGsmAと名付けたグルコサミニダーゼを同定していましたが、今回、GsmAと協調して働くと考えられるアミダーゼAsmAを同定しました。

Journal of Bacteriology Volume 206 Issue 3 e00456-23
https://doi.org/10.1128/jb.00456-23

SsgBはStreptomyces属放線菌においては気中菌糸における隔壁形成に関与することが知られていますが、希少放線菌Actinoplanes missouriensisでは、胞子嚢形成の初期段階に必要であることがわかりました。一方、Streptomyces属放線菌のSsgBが、A. missouriensisssgB欠損株の表現型を正常に戻すことが示されました。本研究により、放線菌に特有のタンパク質ファミリー(SALPs)の機能に関して重要な知見が得られました。

Journal of Bacteriology Volume 206 Issue 3 e00428-23
https://doi.org/10.1128/jb.00428-23

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